2005/06/17

アキフ・ピリンチ著「猫たちの聖夜」を読みました。
ミステリファンにはとってもお勧めですよ〜!!

もともと「猫がしゃべるスタイル」の小説は、トラ猫ミセス・マーフィシリーズを筆頭に、クソ面白くないという印象が強かったので、知ってからなかなか手が出せずにいたんだけど、あまりに読む本がなくなってしまったため、購入。
これがあたりでした!
さすが、ドイツでミステリ大賞を取っただけの事はあります。
作者が結構霧に包まれれた人みたいなんだけど、作者の猫に関する知識もしっかりしています。
ココシリーズのリリアン・J・ブラウンもそうだけど、やはり猫に関する知識をどれだけしっかりもっているかで、小説の中の猫がどれだけ生き生きと動き出すかが変わってくるんですね〜。

主人公は、頭が良くて理屈屋なフランシス。
まだ若いオス猫です。
彼は飼い主のグスタフとともにあるボロ屋に引っ越してきて、その周辺にあまりにも障害を負った同類が多いのに気が付きます。
そしてすぐに同類の死体に遭遇!
自分の住んでいるボロ屋が事の発端であるらしい事をかぎつけたフランシスは、連続殺猫事件の真相に迫っていく・・・という、ミステリ&サスペンスです。
ストーリーは全編、猫のフランシスの視線から、フランシスの言葉を通して語られ、人間の入る余地はありません。
形式的には「我輩は猫である」と同じかな?
だから、人間と猫が入り混じってストーリーがごちゃごちゃになるミセス・マーフィとは違うんですね〜。

ただこれね、徹底的に猫の側から書かれているからか、人間と猫、人間と動物の関わり方というか、問題点というかがハッキリ浮き彫りになっていて、ラストのフランシスと犯人の会話は人間として、身につまされるものがありました。

「だが、わしらが知っているこの宇宙と、わしらの知らないほかの宇宙を全部あわせた中でもっとも醜いのは、間違いなく人間だ。人間。やつらときたら・・・やつらときたら、邪悪で卑劣でずるがしこく、エゴイストで、強欲で残酷で、狂っていて、サディストで、日和見で、血に飢えていて、隣の不幸を面白がり、不実で腹黒く嫉妬深く、そしてなによりもー極め付きの低能なのだ!」
「いいかげん賢くなれ、フランシス!目から鱗を払って、人間がわしらに何をしたかを考えてみろ!余興に飢えた目を慰めるおしゃべり人形、愛嬌あるいたずら小僧、寒々とした心の愛情の埋め草、くだらん生活風景の絵になるアクセント!わしらはそうされてしまったんだ!」
「わしらの首をひん曲げるなど、どんな間抜けな人間のガキにもできる。わしらは永遠に無防備なまま、人間に生殺与奪を握られているのだ」
「やつらがわしらにばかげた名前をつけるのはな、自分らの歪んだ感情をわしらにそのまま投影せずにおれないからだ。人間同士でもうなんにもしゃべることがなくなって、友情や愛情に幻滅して、わしらをその代用品に使うのだ」

なんだこりゃ〜?と思った方も。ストーリを読んでもらえれば、犯人(犯猫?)がこうやって人間をこき下ろすのもわかると思います。
でもそれに対してフランシスがこういってくれます。

でも、いい人間もいるんだ。信じてください。(中略)いつか遠い日に、神の創ったこの世のすべての生き物が平等になるんだ、思いやりあい、それどころか愛し合って共に生き、お互いをもっとよく理解するようになるんです」

もう、このやり取りを読んでて泣きそうになりました。

きっと、犯猫のように思っている猫もいると思う。
そして、フランシスのように人間を信じてくれている猫も。
でも、彼らに人間を「どう思わせるか」は、人間次第なんですよね・・・。

なぜかフランシスは私の中では、ロシアンブルーな印象。
猫を人間に置き換えても十分通用するくらいの、読み応えのあるミステリです。
CAT'S DIARY | comments (0) | - |

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